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建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

CGパースから考える

以前中国の物件を担当していたときに、中国人のクライアントから「あなたたちが出してくるイメージパースは良くないので、中国の会社にイメージパースをつくらせたほうがよい。」とアドバイスされたことがありました。

中国のCG会社のHPなどに掲載されている参考パースは、強い光が建物に当たっていて、コントラストが強く、ガラスは光を反射してぎらっと輝き、空は黄砂が舞っているようになんだか黄色く霞んでいる、みたいなものが多いですよね。日頃我々がよかれと思っているイメージパースの美的基準からしてみると「なんだかちょっと違う。。」って思っちゃって、結局、必要なイメージパースのうち、半分は日本で、もう半分は中国の会社にお願いしました。

 

で、結局このプロジェクトは流れちゃったんですけど、その時「美的感覚って、国によってちがう。」というあたりまえなことをそれまですっかり忘れていたんだなあということに改めて気がつきました。

我々が、ちょっと違う、と思った表現の中にこそ、中国で暮らす人たちが日常感じている「雰囲気」みたいなものが表現されていたんですよね。われわれがやらなければいけなかったのは、その「雰囲気」を洗練させて彼らの前に提示する事だったんです。その手段として、その「雰囲気」を肌感覚で知っている中国のCG会社を使う事はとても大事な事だったんですね。

 

もちろん、プロジェクトによっては、場所の空気をがらりと変えるようなものが求められる事もあるのでこのケースばかりではありません。だけど、インターナショナルなプロジェクトというものは、チームを構成する人それぞれの個人的な背景をどうやって生かしていくのかが結構重要なんだということに気づきました。

どういう人々でチームを組んで、どの人にどんな仕事をしてもらうのか。これは国内の仕事ではほとんど気にならない問題です。だって、日本人はだいたいみんな同じような文化的背景の元に育っているから、プロジェクトで求められる「雰囲気」をみんなわかっているから。だけどわかっているからこそ、プロジェクトを進めていく中で変な政治、とか根回し、みたいなものが発生しちゃったりもするんですけどね。そういうところめんどくさいですよね。

インターナショナルなプロジェクトは、提示される物に対して、クライアントの「あり」「なし」の振れ幅が大きいんだと思うんです。クライアントの要求を理解して、かつ、それを表現できていれば「あり」。要求を理解していてもそれをきちんと表現できていなければ「なし」。だからクライアントがプロジェクトに何を求めているのかを正確に理解する事がまずは一番重要で、その次にプロジェクトを進めるチームをどうやって構成するかが重要なんだろうなって気がします。