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建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

百貨店の終わり

東京都内の再開発によって、最近大規模な商業施設が続々とオープンしています。

東急プラザ銀座、銀座SIX、東京ミッドタウン日比谷など。この後も、三越日本橋のリニューアルや日本橋高島屋のオープンが控えています。

 

ビルの構成ですが、概して、テナントとしては異様にレストラン比率が高く、屋上庭園や広場などのフリースペースを従来に比べて異様に広く取っているのがわかります。

行ってみると、物販店舗にあまり人は入っておらず、レストランに異様に人が並んでいることが多いです。それから広場やラウンジ、蔦屋などブラブラしたりゆっくり腰を落ち着けられる場所に人が溜まっている。

 

こういうの状況を見ていると、すでに百貨店という形式自体が時代に合わなくなってきているのが見て取れます。物を一ヶ所に集めて人を箱の中に呼び込み、お金を消費させる、という事業モデルが時代に合わなくなってきているのです。

 

そもそも百貨店業界はネットショッピングが一般的になってくるにつれて危機感を前々から募らせていたはずです。その危機を乗り越えるための店舗建替や大規模リニューアルだったのだと思うのですが、この時、百貨店業界のプランナー(代理店のプランナー?)が考えたのは大きく以下のことだったのだと思います。

 

箱そのものを楽しめる空間にする

そのために具体的にやったことは以下の2点です。

→1、建築家・デザイナーの起用

→2、屋上庭園や広場をつくる

 

どの百貨店の新規オープン、リニューアル計画を見ても、戦略は上記に収斂されているのですが、実はこれはとんでもない間違いです。

 

なぜ間違いなのか、1と2を順番にご説明しましょう。

1、建築家・デザイナーの起用

そもそも百貨店は大量の商品で空間が埋め尽くされていること自体が魅力的なインテリアだったのです。商品を入れる箱(建築)はむしろなんの飾り気もない簡素なものでよかったのです。その中の一部の商品を買って家に持ち帰ることで、百貨店でのショッピング体験を家でも追体験できていたのです。

なので、箱それ自体がキャラクター(あるいはストーリーと言い換えてもよいかもしれません)を持ち始めるとどうでしょう。箱が人々に提供するストーリーは商品が持つストーリーとは異なります。異なる2つのストーリーを同時に体験した人々は百貨店空間と商品、どちらにも満足できません。

 

2、屋上庭園や広場をつくる

ネット上に商品が集まり、それを簡単に購入できる現在です。人々は例えば、山の中や大きな広場にいながら簡単に買い物ができてしまう。百貨店は往々にして都心に位置するので、どんなにがんばっても森の中での自然体験に匹敵するようなリラックスした体験はできません。

 

だから、近年オープンした百貨店も、これからオープンする百貨店も、オープン当初こそ人は集まるとおもいますが、売り上げは瞬く間に失速するでしょう。

 

今売り上げが上がっているアジアからの観光客を目当てにした商売(インバウンド)もそのうち終わります。今は偽物と本物をネット上で判別できないために日本での買い物をする方たちが多いですが、あと数年もすればこの情報格差はなくなります。

 

そのとき、百貨店という形式が今後も存続する道はあるのでしょうか?