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建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

アジアで日本人が建築デザインをするということ

昨今のアジアの建築市場の活況はみんなの知るところです。アジア各地で仕事をしている建築事務所のみなさんも多いのではないでしょうか。

 

このようにアジアに世界から資本が投下され建設熱が高まっている現在、日本人の建築デザイナーの役割はとても大きくなっています。この先5年くらいはアジアにおける建築プロジェクトにおいて、他の外国人よりも地理的なアドバンテージがあると考えます。

それは

(1)地理的に他のアジア各国に近い。

(2)文化的な背景を共有している。

(3)アジア各国の中で日本が先行して建築デザインの分野で世界的に認められている。

という3点からです。

 

順にブレイクダウンすると、、

(1)

中国/上海空港まで3時間(時差-1時間)、韓国/金浦空港まで2.5時間、ベトナムハノイまで5.5時間(時差-2時間)という東京から各アジアの都市までの所要時間です。欧州、米国からアジアへの航空時間に比べて圧倒的に近いですよね。

ネットによるコミュニケーションが発達している現代においても、場所に多くの制約を受ける建設業にとっては、現場に何度も脚を運ぶという作業が不可欠です。その点で、なんだったら日帰りでも行けちゃう近さは大きな魅力です。 

 

(2)

例えば、中国との関係で言えば日本は遣隋使/遣唐使を派遣して、中国の文化を一生懸命学習していました。もちろんその際に中国の建築様式も一生懸命学び、日本に移植していったわけです。それは今日、洗練/土着化されて日本建築の中に息づいています。

他にもインドとの関係では仏教国というところで繋がっていたりします。

その他、外見が似ているというだけでも単純に親近感がわいたりだとか。身体のサイズが似通っているということは、必要とする空間サイズが似通っているということでもあります。例えば、椅子の座面の高さだとか。

 

(3)

例えば1970年代に丹下さんがアラブの国々で徴用されたのは主に政治的な問題からでしたが(西欧諸国の植民地であったアラブ諸国では西欧の建築家を起用するのを好まなかった。その点日本はそうした対立から無関係な立ち位置にいた。)、現在はアジアの新興国が世界市場に打って出るにあたって、自国のアイデンティティ、つまり「ウリ」を明確に打ち出す必要がある。それはもちろん建築においてもです。

そのようなプロジェクトに日本人が起用されるのは、日本人建築家が建築デザインの世界で他のアジアに先行して認められているからです。それは例えば、プリツカー賞を日本人が5人も受賞していることでも明白です。

 

 

アジアの新興国は日本人建築家を利用して、世界的に認知されるような自国の建築を構築しようとしているわけです。世界スタンダードの洗練されたデザイン手法で自国の風土/文化に形を与えるということが日本人建築家に求められていることです。ここで西欧の建築家が起用されないのは、(2)で説明したように、日本は他のアジア諸国と文化的な背景が似ているので、使いやすいからです。それから世界的に見ても日本の施工技術が優れているからという理由もあるでしょうね。

 

あともう一点、日本が他のアジア諸国がこれからたどろうとしている道をすでに70年前からたどってきた、そして成功してきたということがあげられるでしょう。

・「日本建築様式」に代表される戦時中の日本民族のための建築の理論の構築と実践

・敗戦後、タウトやグロピウスの手を借りながら日本伝統建築を近代建築に接続するための作業

 

日本の建築家達がこの70年の間に直面してきた以上のような課題に今後アジアの新興国も直面する事になるのでしょう。