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建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

歴史的建造物に対する態度ー日本人の場合。

最近、丹下さんや、黒川さんがデザインした日本の近代建築の多くが取り壊されかかっているよね。

 

日本は欧州に比べると、歴史的建造物が結構簡単に壊されてしまったり、壊されていなくてもうまく活用されていなかったりする印象があるのだけれど、それが何故なのかを考えてみた。

 

そもそも建築は社会制度・理念を世に定着させるための道具。

 

だから昔に建てられた建築は、その当時の社会制度・理念が反映されたデザインになってる。もちろん、社会制度・理念は建築があればよいというものではなく、その建築に働きかける人間の営みがあってこそ世に定着する。

 

古代→中世→近代→現代と時代を経る中で、社会制度・理念は変化してきたから、ある時代に建てられた建築は、時を経て社会が変わると「用なし」、「奇妙」、「使いづらい」建物になる。一方で、建築はある時点での社会制度・理念を反映しているからこそ、「歴史」的建造物なのである。

 

この「歴史」は利用することができる。ある制度のための建築に当初の目的とは異なる営みが加えることで、その建築が当初背負ってきた制度、理念を換骨奪胎して別の目的のために運用する。

そうやって古来からの建築をうまく使ってきたのが欧州。歴史をうまく運用してリーズナブルに社会制度を更新してきた。

 

一方で日本は、第二次世界大戦後の徹底的な既存政治体制の否定と、産業の大転換(農業から工業へ)によって、欧州のように過去の蓄積を思想的にも建築的にも生かすことができなかった(禁じられた)。

 

現在の日本で人々の歴史的建築物への愛着が少なかったり、うまく活用できていなかったりするのは、この後遺症なのかも。