CITIPEDIA シティぺディア

建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

アイコニックな建築による都市デザインの終焉?

この間、DezeenでH&deのチェルシーのスタジアムデザインをみつけました。

 

www.dezeen.com

 

建築的にも、都市デザイン的にも、とても良く出来たデザインだと思います。

私は好きです。

 

かつてFrank. O. Gehryのビルバオが都市への観光客を呼び込みに成功し、都市の魅力を高めて都市を潤すための建築デザインはかくあるべし、とお手本のようにみなされていた(つまりアイコニックな建築は都市の起爆剤となって観光客の増加に寄与するので都市デザインにこの方法を取り込むべし、とされた)。けれど、そうやって一時的に観光客数を増やした都市は20年が経とうとする今でも果たして魅力的な都市としてあるでしょうか?

 

H&deのChelseaスタジアムは上記のようなアイコニックな建築による都市デザインのカウンターパートとして見ることが可能です。

 

その土地にある既存のデザインソース(この場合レンガとスチール格子)を利用することで、この都市にレンガの総量が増えます。今回はスタジアムという巨大な施設なので大量に。この「大量のレンガ」は都市全体の視覚的なアイデンティティを強める。

 

「大量のレンガ」が他所との差別化につながってその都市を特別な都市にする。観光客が増えて都市が潤う。アイコニックな建築はそれのみでデザインが完結してしまうけど(しかも賞味期限が短い)、既存のリソースを利用したデザインは都市の歴史に連なって、その都市を成長させることができます。そしてそのデザインは「開かれて」いる(それだけで完結していない)ので、未来に他の人が新しいデザインを接続することも可能です。

 

現在の国際的な都市間競争の中で、建築はもはやそれ単体のデザインとしてはそれほど意味がなく、都市の魅力を高めるためのひとつのパーツとしてデザインされたほうが、費用対効果が高いんです。その建築が得るリターンも大きくなる。

 

私は日本の国立競技場もザハのデザインでなくてよかったと思います。お金云々もあるけど、ザハのデザインをあの場所に作るのは時代遅れの都市デザインだと思うから。