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建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

40代で若手ってなんなの、のつづき。新しいチームワークを考えてみる。

前回の続き。

 

ちなみに前回あげた建築家という職能に求められる技能の(1)〜(14)は建築設計事務所が成長する過程で順番に身につけていく。

 

<第一期>住宅をつくっている時期:

個人に対しての建築は(1)〜(6)までの技能があればなんとかなる。

<第二期>小さな公共の建物をつくりはじめた時期:

とたんに(8)、(9)が必要になる。つくられる建築の承認を求める相手が「あなた」から「みんな」に飛躍的に増えるからだ。「みんな」の合意を取り付け、提案する建築を建てることへの承認を受けるには効果的なプレゼンテーションと適切な合意形成の技術が必須だ。

 

<第三期>大きな公共の建物をつくりはじめた時期

規模が大きくなると、よりいっそう求められる技能は増える。

まず、巨大な建築はそれが作られる都市・街が持っている文化に与える影響が大きいから、それを検証しなければならない。検証のために都市計画の知識やまちづくりに関する知識が必要だ。もちろん、その地域の文化に対する造詣も。

同様に巨大な建築はその地域環境に与える影響も大きい。その建築がどの程度サスティナブルなのかを検証しなければならない。(自然エネルギーを効果的に使っているとか、エネルギーのリサイクルをしているとか。)

それから、大きい建築はそれを建てるのに莫大な金と時間がかかるが、通常クライアントはそれを可能な限り圧縮することを望む。現在はIT技術の進歩のおかげで、それを大幅に圧縮することが可能なので、これを実践することを求められることも少なくない。今はやっているのはBIMと呼ばれる図面の作成方法だ。図面をすべて3Dモデルで作成し、かつ、その3Dモデルを意匠・構造・設備・積算・施工で同時に共有しようというもので、この技術によって図面作成(設計・施工時とも)の時間と積算の手間が大幅に省ける。このアプリケーションを習得するのも結構大変だ。

 

 

これまで、こういった多様な技術・知識を各建築設計事務所は個々の事務所で身につけようとしてきた。

だけど、こうした技能を身につけるには時間と人手がかかる。(ひとりの人間がこうした多様な技能を完璧に習得するのは不可能だ。)だから成長過程の第三期に入った建築設計事務所は所員数も多くなる。

 不運にも住宅しか仕事が無い事務所の場合は(1)〜(5)までの技術しか身につけられない。現在のところ、住宅を仕事にしている場合、一般的に(6)から先の技能は必要とされないからだ。けれど、よくよく考えれば住宅こそ、地域をかたちづくる重要なパーツだ。ここに(6)から先の技術を投入することによってこそ、今の社会に適した新しい地域環境が形作られるはずだ。

 

 

なにを言いたいのかというと、こうした技能をひとりの建築家、あるいはひとつの建築設計事務所にもとめるのはやめたらどうなのか、ということ。

(1)から(16)まですべてが得意な建築家や建築設計事務所は多くないはずだ。だから、もうちょっと個々に専門化した小さな組織が緩やかにつながり、プロジェクトごとに必要なチームが集まって、フレキシブルに仕事を進めていくような新しい建築設計チームのありかたはできないんだろうか。

 studio Lのような事務所がうまくいっているのは、これまでこうした仕事は建築設計事務所や都市計画事務所に任されていたけれど、うまくやれていなかったからなのではないんだろうか。

その原因は建築設計事務所に求められる技能が増えすぎて、対処できなかったからではないのだろうか。

 

おもしろい未来をつくるためには、おもしろい組織づくりも必要なんだな、と最近よく考えます。