CITIPEDIA シティぺディア

建築と都市、そこでの生活にまつわるあれこれ

日本の建築空間を売り出そう!(1)

よく言われることですが、日本の建築物の施工精度はすばらしい。

日本では、建築設計事務所が書いた設計図にメーカーの設計士さん、現場の職人さん達の知恵が加わって、細部まで気が配られた質の高い建築物ができあがります。

 

そんな私たち日本の設計事務所が日本以外の国で建築物を作るときに、日頃苦労しているのが、現地の施工技術と日本の施工技術の間にあるギャップです。

 

例えば、中国の上海に”和食レストラン”を作ってほしいと中国人のクライアントから私たちに依頼があったとします。

この時クライアントが求めているのは、日本に建つ建築物が当たり前のように持っている、繊細さ/緻密さと、それが醸し出す雰囲気です。彼らは日本で日本の職人さん達が作り上げた建築物を見て、「こんな建築が上海にあったら他の店と差別化できて、目立つし、お客さんもたくさん来るはずだ!」と思って日本人の私たちに建築物を依頼をしてきます。

依頼されると、私たち建築設計者は図面を書きます。render imageなんかもつくったりしてクライアントと建物イメージを共有し、ゴーサインが出ると、cadデータとしての図面はメール等で瞬時に上海にいる施工者に渡ります。なんだったら日本で一度作ったことのある建物の施工図データをそのまま渡してもいいわけです。それは正真正銘、その建物情報がもれなく記載された図面です。その図面を受け取った上海の職人さんがその図面どおりに建物をつくればいいですよね。

 

でも、それだけじゃ作れないんですよね。

 

だから、まずは図面をローカライズする人たちがいます。上海で作ることができるように図面をどんどん変えていきます。そのローカライズされた図面をみた設計者は思います。「だめだ!こんなんじゃ日本建築が持つ空気感は表現できない!これではクライアントに嫌われちゃう!」。

そこで設計者は、ここだけは死守しないといけない、という部分のディティールだけはなんとしても実現しようよ、と上海の施工者や職人さんに掛け合います。「ちょっとモックアップ(原寸模型)つくって、できるかできないか試してみようよ。」って。モックアップの製作でもあーだこーだいいながら、なんとかそれっぽいディティールが一部では再現できそうです。

かくして、「まあ、なんとなく日本の建築っぽいね。」っていう建築ができあがります。

 

 

ほら、これって、近頃の建築グローバリゼーションの中でよく見られる光景ですよね。

 

 

これってなんとかならないのかな、ってよく思います。これだと設計者もストレスがたまるし、クライアントも残念。現地の職人さんもスキルもあがらないから、また新しい仕事をするときにも同じことの繰り返しです。 

 どうしたらいいんでしょう。

 

日本建築が持つ独特の雰囲気を売りたいのに、日本以外では作れないというじれんま。

 

次回この問題の解決策を考えてみたいと思います。